朝、目を覚ましたときに「今日は仕事に行きたくない」と感じることは、決して珍しいことではありません。ただ、その気持ちが一時的な疲れなのか、働き方や職場を見直した方がよいサインなのかは、人によって異なります。
「多くの人も同じだから我慢すべき」とも、「行きたくないならすぐ辞めるべき」とも一概にはいえません。大切なのは、気持ちの強さや続いている期間、心身への影響、原因を変えられる可能性を分けて考えることです。
この記事では、主に2025年を対象とした公的統計や民間調査から、働く人のストレス、転職への希望、実際の転職の状況を整理します。そのうえで、仕事を続けるか、休むか、転職に向けて動くかを判断するための視点を紹介します。
先に結論をいうと、「仕事に行きたくない」という気持ちだけで結論を急ぐ必要はありません。ただし、眠れない、食欲がない、涙が出る、動悸がするなどの不調が続いている場合は、退職するかどうかを考える前に、休息や専門家への相談を優先してください。
仕事に行きたくないのは珍しい?まず知っておきたい数字
「仕事に行きたくないと思う人は何割いるのか」と気になる方もいるでしょう。ただ、公的統計は「仕事に行きたくない」という言葉をそのまま質問しているわけではありません。
ここでは全国規模で行われている厚生労働省の調査から、仕事や職業生活に関する「強い不安、悩み、ストレス」の状況も見ていきます。
働く人の67.5%が仕事や職業生活に強いストレスを感じている
厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活について、強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある労働者は67.5%でした。正社員に限ると69.1%です。調査対象は、常用労働者10人以上を雇用する民営事業所で働く労働者です。
| 強いストレスを感じる事柄 | 割合 |
|---|---|
| 仕事の量 | 39.5% |
| 仕事の失敗、責任の発生など | 39.5% |
| 対人関係(セクハラ・パワハラを含む) | 32.9% |
| 仕事の質 | 30.7% |
人間関係だけでなく、仕事量や責任、仕事内容そのものも大きな負担になっています。「仕事に行きたくない」という気持ちの背景には、一つではなく複数の要因が重なっている場合があります。
転職したい人と、実際に転職した人はどのくらい?
次に、総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」から、転職への意向と実際の行動を見てみましょう。
| 2025年平均 | 人数・割合 | 数字の意味 |
|---|---|---|
| 転職等希望者 | 1,023万人 | 今の仕事を変えたい人に加え、別の仕事も持ちたい人を含む |
| 転職等希望者のうち求職者 | 360万人 | 転職等を希望し、実際に仕事を探している人 |
| 転職等希望者のうち非求職者 | 663万人 | 希望はあるが、仕事探しはしていない人 |
| 転職者 | 330万人 就業者の4.8% | 過去1年以内に前の仕事を辞め、現在の仕事に就いた人 |
転職等希望者と転職者は、同じ人たちのその後を追った数字ではありません。330万人を1,023万人で割って、転職が実現した割合と考えることはできません。
転職等を希望する1,023万人のうち、実際に求職していた人は360万人でした。仕事を変えたい、または別の仕事も持ちたいと思っていても、すぐに求職を始める人ばかりではないことがわかります。
また、リクルートワークス研究所が同じ人を継続して調べた「全国就業実態パネル調査」では、前年に転職を希望していた人のうち、2025年に実際に転職した人は11.8%でした。前年に転職活動をしていた人に限っても、実際に転職した割合は32.6%です。
ただし、転職しなかった理由はこの数字だけではわかりません。希望に合う求人がなかった人もいれば、異動や待遇改善によって残ることを選んだ人、家庭や経済面を考えて時期を待っている人もいるでしょう。「転職しなかった=転職活動に失敗した」とは判断できません。
出典:リクルートワークス研究所「転職希望者の転職率、10年で2.7ポイント減少」
実際に転職した人は、なぜ前の会社を辞めたのか
「仕事に行きたくない」と感じる理由と、最終的に転職を決める理由は、必ずしも同じではありません。転職サービスdodaが、2024年7月から2025年6月までに転職した20~59歳の正社員978人に複数回答で尋ねた調査では、次の理由が上位でした。
| 順位 | 転職理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 給与が低い・昇給が見込めない | 36.6% |
| 2位 | 労働時間に不満(残業が多い・休日出勤がある) | 26.3% |
| 3位 | 個人の成果で評価されない | 22.8% |
| 4位 | 尊敬できる人がいない | 20.9% |
| 5位 | 社内の雰囲気が悪い | 20.7% |
給与だけでなく、労働時間、評価、人間関係や職場の雰囲気も転職のきっかけになっています。原因が一つに見えても、「長時間労働に見合う評価や給与がない」など、複数の不満が結びついていることもあります。
調査データからわかること、わからないこと
- 仕事や職業生活に強いストレスを感じる人は少なくない
- 仕事を変えたいと考えても、すぐ求職や転職に進む人ばかりではない
- 転職理由は、給与・労働時間・評価・人間関係など複数の要因に分かれる
一方、これらの調査から個人の「辞めるべきか」という答えを出すことはできません。ストレスを感じている人が多いからといって、自分のつらさを我慢してよいことにはなりません。また、転職する人が一定数いるからといって、転職すれば必ず状況が改善するわけでもありません。
厚生労働省の2025年雇用動向調査では、転職後に前職より賃金が増えた人は40.8%でしたが、変わらなかった人は25.5%、減った人は31.0%でした。転職には状況を変える可能性がある一方、条件がすべて良くなる保証はありません。
仕事を続けるか、休むか、辞めるかを考える3つの視点
1.心身の状態に無理が出ていないか
まず確認したいのは、仕事の条件よりも自分の健康です。眠れない、食欲がない、何をしても気分が晴れない、涙が出る、動悸や吐き気がする、遅刻や欠勤が増えたといった変化が続いている場合は、気合いで乗り切ろうとせず、休息や医療機関への相談を検討してください。
厚生労働省の「こころの耳」も、眠れない、食欲がないなど心身の不調が続くときは、「辞める」だけでなく「休む」という選択肢や専門医への相談を案内しています。
2.原因と、改善する可能性を分けて考える
「仕事に行きたくない」を一つの感情のままにせず、何がつらいのかを書き出してみましょう。
- 繁忙期や一時的な疲れなのか
- 上司や同僚との関係、ハラスメントが原因なのか
- 仕事量、残業、休日、通勤などの働き方が合わないのか
- 仕事内容、給与、評価、将来のキャリアに不満があるのか
- 異動、業務調整、休暇、働き方の変更で改善できるのか
自分の工夫で変えられる問題と、会社側が動かなければ変わらない問題を分けると、次の選択肢が見えやすくなります。ハラスメントや法令違反が疑われる場合は、自分だけで解決しようとせず、事実がわかる記録を残し、社内外の相談窓口を利用することも大切です。
3.辞める前に、社外の選択肢と生活面を確認する
心身の安全に差し迫った問題がない場合は、在職中に求人や給与水準を調べる方法があります。実際に応募するかは後で決めても構いません。情報収集をすると、今の職場に残る場合との比較ができるようになります。
一方、退職を先に決めるなら、当面の生活費、健康保険や年金、雇用保険の基本手当、退職時期なども確認が必要です。つらさが強いときほど判断を急ぎやすいため、健康上の緊急性がない場合は、選択肢を減らさない順番で進めるのが安全です。
今日からできる4つのこと
- 今日の出勤が難しいほどつらい場合は、まず休めるかを考える
- 行きたくないと感じた日、きっかけ、心身の症状を簡単に記録する
- 家族や友人だけでなく、上司、人事、産業医、医療機関、公的窓口など相談先を選ぶ
- 心身に余裕があり、仕事を変えることを考えている場合は、求人を見て社外の選択肢を確かめる
転職を考え始めたものの、次の仕事で何を変えたいのか決まっていない場合は、仕事を探す前に整理したいこと|経験・希望条件・働く目的を考えるで、今の職場で変えたいことや、次の職場でも維持したい条件を整理できます。
仕事を探す段階へ進む場合も、最初から一つのサービスに絞る必要はありません。ハローワーク、求人サイト、転職エージェント、企業の採用ページなどの違いは、仕事はどこで探す?求人サイト・ハローワークなど7つの方法で比較できます。
一人で抱え込まないための相談先
- 心身の不調や仕事の悩み:こころの耳「相談窓口案内」
- 自分のストレス状態を整理したい:5分でできる職場のストレスセルフチェック
- 解雇、賃金、配置転換、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど:総合労働相談コーナー
- 求人情報や職業相談:最寄りのハローワーク
今、自分を傷つけたい、消えてしまいたいという気持ちがある場合や、一人で安全を保つことが難しい場合は、仕事や退職の判断よりも安全の確保を優先してください。身近な人に連絡し、119番、医療機関、または「つらい気持ちを抱えている方へ」に掲載されている相談先を利用してください。
よくある質問
仕事に行きたくないという理由で休んでもよいですか?
心身の調子が悪く、出勤が難しい場合は、まず休息を取ることを考えてください。会社への連絡では、就業規則に沿って「体調不良」と伝える方法があります。不調が続く場合は、医療機関や産業医などへの相談も検討しましょう。
転職するか決めていなくても、求人を見てよいですか?
問題ありません。求人を見ることと、応募・退職を決めることは別です。社外の給与水準や働き方を知ることで、今の会社に残る場合も含めて比較しやすくなります。
人間関係が理由で辞めるのは甘えですか?
人間関係や職場の雰囲気は、調査でもストレスや転職の主な理由に挙がっています。甘えかどうかで考えるのではなく、心身への影響、配置転換などで改善できる可能性、同じ状況が続く見込みを確認する方が現実的です。
仕事に行きたくない気持ちは、何日続いたら危険ですか?
日数だけで一律には判断できません。気持ちの強さや、睡眠・食欲・仕事や日常生活への影響も重要です。気分の落ち込みや不眠などが2週間程度続く場合は注意が必要とされていますが、それより短くても症状が強い場合や安全に不安がある場合は、早めに専門家へ相談してください。
まとめ
仕事や職業生活に強いストレスを感じる人は少なくありません。また、今の仕事を変えたい、または別の仕事も持ちたいと考える人は1,000万人を超えています。一方で、転職を考えること、実際に仕事を探すこと、転職することはそれぞれ別の段階です。
周囲と比べて「自分は弱い」と判断したり、反対に「みんなつらいから」と我慢したりする必要はありません。まずは心身の状態を確認し、原因と改善の可能性を整理する。そのうえで、休む、相談する、社内で改善を求める、転職先を探すといった選択肢を比較していきましょう。


