給料は10年前よりどれだけ増えた?最低賃金・正社員・役員を比較

「給与と物価、10年でどう変わった?」の見出しと、比較を表す図形、財布、買い物かごのイラスト 仕事探しのノウハウ

「賃上げのニュースは増えたけれど、自分の暮らしは楽になっただろうか」。給与明細や求人の給与欄を見ながら、そう感じることはありませんか。

2015年から2025年の10年間で、最低賃金の全国加重平均は40.5%、民間の正社員の平均年収は参考比較で13.3%、上場企業の従業員給与は15.4%増えました。一方、物価も14.0%上がっています。給与が増えたことと、暮らしに余裕が生まれたことは、同じとは限りません。

さらに10年間を前半と後半に分けると、給与の伸びが直近5年に集中していたことが分かります。最低賃金、正社員、上場企業の給与、役員の報酬を比べながら、いまの給与や応募先の条件を考えてみましょう。

10年間で、最低賃金と給与はどれだけ増えた?

年収の水準と上昇率を、2015年・2020年・2025年で並べました。物価は全国の消費者物価指数の「総合」を使い、2020年を100としています。

指標2015年/年度2020年/年度2025年/年度10年間の上昇率
最低賃金(全国加重平均)798円/時902円/時1,121円/時40.5%
民間の正社員・平均年収(参考比較)493.6万円501.9万円559.3万円13.3%
上場企業の従業員・平均年間給与600.3万円609.5万円692.6万円15.4%
物価(全国・総合指数)98.2100.0111.914.0%

最低賃金は各年度の改定後の時間額です。民間の正社員は各年に1年を通じて勤務した人の平均で、賞与を含む税引き前の年収です。上場企業は帝国データバンクの調査を使い、2025年度は2025年4月〜2026年3月期の決算が対象です。暦年と決算年度にずれがあるため、異なる集計の大きな動きを見る比較です。

国税庁の2015年・2020年は新たな推計方法で再計算された参考値を使用しています。また、2021年から「正規・非正規」が「正社員・正職員」「パート・アルバイトなど」に変更されています。この区分変更をまたぐ正社員の比較は参考値です。上場企業の系列は「従業員給与」であり、国税庁の正社員だけの集計とは分けて読みます。

出典:厚生労働省「最低賃金の全国加重平均の推移」「地域別最低賃金全国一覧」(2025年度額は改定前欄)、国税庁「民間給与実態統計調査」2015年分・2020年分・2025年分の第6表、帝国データバンク「上場企業の『平均年間給与』動向調査(2025年度決算)」、総務省「2025年平均消費者物価指数の動向」。上昇率は公表値から当サイトで計算し、小数第1位に丸めています。次の5年間の比較表も同じ資料によります。

最低賃金の伸びが大きい一方、正社員や上場企業の給与は10年間で1割台の上昇でした。ただし、最低賃金は賃金の下限で、実際の募集時給の平均ではありません。パート・アルバイト全員の時給が40.5%上がったことを示す数字ではない点は押さえておきましょう。

前半5年は小幅、直近5年に給与の伸びが集中

10年間の合計だけでは、最近の変化が見えにくくなります。2015〜2020年と2020〜2025年の上昇率を、それぞれ5年間の累計で比べてみます。

指標前半5年:2015→2020直近5年:2020→2025
最低賃金(全国加重平均)13.0%24.3%
民間の正社員・平均年収(参考比較)1.7%11.4%
上場企業の従業員・平均年間給与1.5%13.6%
物価(全国・総合指数)1.8%11.9%
2015〜2020年と2020〜2025年の最低賃金、正社員の平均年収、上場企業の従業員給与、物価の上昇率を比較したグラフ
給与の伸びと物価上昇はいずれも直近5年に集中。正社員は調査区分変更を含む参考比較で、年度と暦年のずれがあります。

上場企業の給与は、前半5年では600.3万円から609.5万円へ9.2万円増え、直近5年では692.6万円へ83.1万円増えました。10年間の増加額92.3万円のうち、約9割が直近5年の増加です。

民間の正社員も、前半の8.3万円増に対して、直近5年は57.4万円増でした。調査区分の変更を含む参考比較ですが、最近の賃上げが10年間の数字を押し上げている様子が見えます。

ただ、その直近5年には物価上昇も集中しています。給与の上昇率だけを見て「生活も同じだけ改善した」と考えると、毎日の買い物で感じる変化との違いが残ります。

給与は増えた。それでも暮らしの余裕が増えにくいのはなぜ?

物価が上がると、同じ金額で買える量は減ります。給与が増えた分を考えるには、金額の増加と、物価を踏まえた買える量の変化を分けると分かりやすくなります。

民間の正社員の平均年収は10年間で13.3%増えましたが、物価は14.0%上がりました。給与の伸びを物価の伸びで割る参考計算では約0.6%減です。調査区分の変更も踏まえると、「物価を考慮すると、おおむね横ばい」と読むのが適切です。

上場企業の給与は、直近5年で13.6%増、物価は11.9%増でした。年平均の物価で調整する目安では約1.5%増となります。10年間では給与15.4%増に対して物価14.0%増で、同じ参考計算では約1.3%増です。決算年度と暦年がずれるため厳密な実質給与ではありませんが、増えた給与の多くが物価上昇で相殺される大きさをつかめます。

例えば、2020年に年収400万円だった人が2025年に440万円になれば、給与は10%増です。一方、2020年の400万円と同じ買える量を、全国の総合指数の伸びで保つには約447.6万円が目安になります。これは税引き前の単純な例ですが、「40万円増えたのに余裕が増えない」と感じる理由を考える助けになります。

物価指数は全国の平均的な動きです。自分の暮らしでは、家賃、食費、光熱費など、負担が大きい支出がどう変わったかも見てください。また、統計の平均給与は毎年の働く人や企業の構成によって変わり、同じ人の昇給を追った結果ではありません。

役員の給与は、正社員より伸びている?

全国の民間事業所では、役員の平均年収は10年で22.2%増

国税庁の調査で、正社員と役員の平均年収を並べると、次のようになります。年収は賞与を含む税引き前の額です。

比較する項目正社員(参考比較)役員
2015年の平均年収493.6万円643.2万円
2020年の平均年収501.9万円666.5万円
2025年の平均年収559.3万円786.3万円
前半5年の上昇率(2015→2020)1.7%3.6%
直近5年の上昇率(2020→2025)11.4%18.0%
10年間の上昇率(2015→2025)13.3%22.2%

出典は前掲の国税庁「民間給与実態統計調査」各年の第6表。2015年・2020年は再計算参考値を使用し、上昇率は当サイトで計算しています。正社員は調査区分の変更を含む参考比較です。

役員の平均年収は、前半5年では3.6%増、直近5年では18.0%増でした。10年間の伸びも、正社員の参考比較を上回っています。物価を考慮した参考計算では約7.3%増です。この役員には、中小企業を含む民間事業所の取締役・監査役や法人の理事などが含まれ、大手上場企業の経営トップだけの数字ではありません。

大手上場企業では、取締役と社員の報酬比率にも変化

上場企業に絞った役員の動きは、日本総合研究所のTOPIX500社の調査で確認できます。2025年度版は498社を対象に、2024年4月〜2025年3月決算の有価証券報告書を集計しています。

各社の「社内取締役1人当たりの総報酬÷社員の平均給与」を求め、その比率を小さい順に並べた中央の値を比べると、次のように変わっています。

比較する指標2020年度版2025年度版
取締役と社員の報酬比率(各社の比率の中央値)7.8倍9.0倍

2025年度版で比率を計算できたのは494社で、同じ会社内の取締役と社員を比べた比率です。

出典:日本総合研究所「TOPIX500社における役員報酬の支給実態調査(2025年度版)」および同報告書。

大手上場企業では、社員給与に対する取締役報酬の水準が高まっています。各社の報酬比率の中央値は、2020年度版の7.8倍から2025年度版の9.0倍へ上昇しました。対象企業は年度によって変わりますが、調査では、社員給与より役員報酬の伸びが大きい傾向が示されています。

背景として考えられるのが、役員報酬の構成の変化です。同調査では、取締役報酬に占める賞与の割合が20.4%から24.7%、株式報酬が9.5%から18.5%へ増えています。総報酬には、有価証券報告書で金額として開示された株式報酬も含まれます。特定はできませんが、業績などに応じて変わる報酬の比重が高まったことが、社員給与との伸び方の違いを生む一因になっている可能性があります。

売上高1兆円以上の企業では、社長・CEOの報酬が約25%増

経営トップの報酬額の変化は、三井住友信託銀行とデロイト トーマツの「役員報酬サーベイ」で確認できます。売上高1兆円以上の企業について、社長・CEOの報酬総額の中央値を2020年度版と2025年度版で並べました。

比較する指標2020年度版2025年度版増加額増加率
社長・CEOの報酬総額(中央値)9,887万円1億2,390万円2,503万円25.3%

出典:三井住友信託銀行・デロイト トーマツ「役員報酬サーベイ」2020年度版・2025年度版。増加額・増加率は公表値から当サイトで計算しています。

報酬の中央値は、2020年度版から2025年度版で約2,500万円、25.3%増えました。前掲の全国の役員平均とは別に、大企業の経営トップの報酬水準がどう変わったかを示す数字です。

社長・CEOの報酬は約25%増と、前掲の上場企業の従業員給与の13.6%増を上回っており、対象企業や期間に違いはあるものの、大企業の経営トップでは給与より報酬の伸びが大きい様子がうかがえます。

自分の給与や応募先の条件は、どう比べればよい?

平均年収の伸びを知ったら、次は自分が受け取る給与の内訳に目を向けてみましょう。いま働いている人は過去の給与明細や源泉徴収票、仕事を探している人は求人票や提示された条件が比較の材料になります。

年収が増えていても、残業時間が長くなった分かもしれません。基本給の上昇、賞与の変動、勤務時間の変化を分けると、給与そのものがどう変わったか判断しやすくなります。

確かめる項目比較・質問すること
基本給・毎月の手当以前よりいくら増えたか。毎月必要な生活費に見合うか
賞与・残業代初年度の賞与はいくら見込めるか。固定残業代の金額と対象時間は何か
時給・勤務時間希望する日数と時間で月にいくら得られるか。年収増が労働時間増によるものか
昇給の時期・基準経験、資格、担う役割が、いつ・どのように給与へ反映されるか

例えば、年収400万円から440万円に増えていても、基本給は変わらず、残業代や一時的な賞与が40万円増えた場合、毎月の安定した収入は同じです。応募先には「提示された年収のうち基本給と賞与はいくらですか」「初年度の賞与も含んでいますか」と聞くと、条件をそろえて比べられます。

給与欄の内訳が分かりにくいときは、ハローワークの求人票の見方で、基本給・手当・固定残業代の読み分けを確認できます。

最低賃金が上がると、月給で働く正社員の給与も見直しが必要になる場合があります。正社員の月給と最低賃金の確認方法で、自分の給与を時間額に直す手順を確認できます。

平均の伸びと自分の昇給が違う理由は、職種、地域、企業規模などによっても変わります。いまの勤務地や希望する職種、雇用形態をそろえて求人を探すと、現時点でどのような給与が募集条件として提示されているか確認できます。働いている人も、すぐに応募する予定がなくても、比較の材料として活用してみてください。

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